SURVEY

大規模企業調査 上場全社を中心とした総合的な企業力判定調査

日本経済新聞社は17日、上場企業・有力非上場企業602社を「働きやすさ」の視点で格付けした「スマートワーク経営調査」をまとめた。格付け上位40社の4割が今期、過去最高の純利益を見込む。いずれの企業も外国人など多様な人材の活用を進め、イノベーション(技術革新)を生み出している。社員の能力を最大限に引き出す経営が、高い成長につながっていることがわかった。

多様で柔軟な働き方の実現、新規事業などを生み出す体制、市場を開拓する力の3要素によって組織のパフォーマンスを最大化させる取り組みを「スマートワーク経営」と定義した。調査ではコーポレートガバナンス(企業統治)などの経営基盤も加えて各社の総得点を算出し、格付けした。

総得点の偏差値が65以上の40社には、コニカミノルタやダイキン工業、アサヒグループホールディングス、花王、イオン、NTTドコモなどが名を連ねる。

40社のうち、6割強の26社(未上場の2社を除く)が今期の純利益で増益を見込む。4割の17社(同)は過去最高を更新する見通し。上場企業全体では、最高益を見込む企業は24%だった。

総合格付け上位40社

人手不足が深刻になるなか、社員一人ひとりの生産性を高める働き方改革が急務となっている。上位企業はいずれも長時間労働の是正や多様な働き方で社員の能力を高めて、収益向上につなげている

システム開発のSCSKは月80時間を超える時間外勤務は社長決裁とするなど、経営トップが率先して長時間労働の是正に取り組み、月平均の残業時間を4年前から約3割減らした。17年3月期の売上高は4期前から18%増え、純利益は167億円から284億円に増えた。

朝型勤務の導入などで残業時間を15%減らした伊藤忠商事も、今期、純利益で2期連続の増益を見込む。

新しいアイデアを吸い上げる仕組みをつくる例も目立つ。2018年3月期に10年ぶりの最高益を見込むソニーは、平井一夫社長直轄で社内から事業アイデアを集め、13の事業を選出した。腕時計のバンドに情報端末機能を内蔵、機械式時計に組み合わせてスマートウオッチとして使える製品などを開発した。キリンホールディングスは20代の女性社員に商品開発の権限を持たせ、新しいノンアルコールビールをヒットさせた。

グローバル化に伴って、海外で働く現地社員への権限委譲も進んでいる。18年3月期で5期連続の最高益を更新する見通しのダイキン工業は売上高の約7割を海外で稼いでおり、現地法人の約半数で外国人が社長を務める。

資生堂は外国人社員中心の欧州地域本社が提携交渉を主導し、有名ブランド「ドルチェ&ガッバーナ」から化粧品の生産・販売のライセンス権を獲得した。

スマートワーク経営調査では今後の重要な経営課題についても調べた。「人材の確保・育成」が45%と最も多かった。新市場の開拓やグローバル化が急務な日本企業にとって、働き方改革が最優先課題になっている。

スマートワーク経営調査は今回が初めて。全国の上場企業と従業員100人以上の有力非上場企業を対象に調査票を配布し、602社(上場は587社)から回答を得た。

スマートワーク経営総合ランキング

総合ランキング一覧(偏差値65未満)はこちら [pdfファイル]

スマートワーク経営調査は「人材活用力」「イノベーション力」「市場開拓力」の3分野に、企業の持続的発展のために必要とされる「経営基盤」を加えた4分野で構成される。企業向けアンケート調査や消費者調査、公開データなどから18の評価指標を作成し、企業を評価した。

【アンケート調査の概要】

企業向け調査は2017年7月、全国の上場企業および従業員100人以上の有力非上場企業を対象に実施した。有効回答は602社(うち上場企業587社)。なお、有力企業でもアンケートに回答を得られずランキング対象外となったり、回答項目の不足から得点が低く出たりするケースがある。

また一部指標においてはインターネットモニター(一般消費者2万420人、ビジネスパーソン1万9600人)および日本経済新聞社の編集委員等(121人)の各社評価も使用した。

【その他の使用データ】

測定指標のうち、市場拡大の一部指標については、レコフM&Aデータベースを基に作成した。また、経営基盤の一部指標については、NEEDS(日本経済新聞社の総合経済データバンク)のコーポレート・ガバナンス関連データ、株主総会データを基に作成した。

【4分野と測定指標】

4分野のスコアを測定する指標は以下の通り。

人材活用力 方針・計画と責任体制、テクノロジーの導入・活用、ダイバーシティーの推進、多様で柔軟な働き方の実現、人材への投資、エンゲージメント・モチベーション向上、人材の確保・定着の7指標。

イノベーション力 方針・計画と責任体制、テクノロジーの導入・活用、新事業創出、イノベーション推進体制、社外との連携の5指標。

市場開拓力 方針・計画と責任体制、テクノロジーの導入・活用、ブランド力、市場浸透、市場拡大の5指標。

経営基盤 ガバナンス・社会貢献・情報開示を総合的に評価した1指標。

【総合評価のウエート付け】

各分野の評価を人材活用力(50%)、イノベーション力(20%)、市場開拓力(20%)、経営基盤(10%)の割合で合算し、総合評価を作成した。

【総合評価・分野別評価の表記について】

総合評価は、各社の得点を偏差値化して作成した。★5個が偏差値70以上、以下★4.5個が65以上70未満、★4個が60以上65未満、★3.5個が55以上60未満、★3個が50以上55未満を表している。

また、各社の分野別評価は、偏差値70以上がS++、以下偏差値5刻みでS+、S、A++、A+、A、B++、B+、B、Cと表記している。

評価に使用した各種指標の集計結果やスコアの詳細データは日経リサーチが提供する。詳細はHPを参照。

(日経リサーチ 編集企画部)

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