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日経Smart Work×プレミアムフライデー
~これからの日本の働き方を考える~

実施3年目を迎えたプレミアムフライデー。日本経済新聞社とプレミアムフライデー推進協議会は、消費喚起とともに4月から関連法が施行される働き方改革の一環としての側面に焦点を当て、2月のプレミアムフライデーの22日に都内で「これからの日本の働き方を考えるシンポジウム」を開いた。講演した有識者や取り組み事例を紹介した企業・団体からは、2年間の結果だけで評価を急がず、制度定着へ息の長い取り組みが必要だと指摘する声が相次いだ。

挨拶

日本経済団体連合会 副会長 石塚 邦雄 氏日本経済団体連合会 副会長
石塚 邦雄 氏

今、プレミアムフライデーを通して消費喚起だけでなく社会的な課題の解決に至るようなことが考えられないかと思っている。健康増進やリカレント教育、学び直しに活用することもできるだろう。そして、例えばキャッシュレス文化と結びつけた「プレミアムキャッシュレスフライデー」など社会的課題への提案をしていきたい。

プレミアムフライデーの定着度はまだ高くないともいわれるが、週休2日も定着するまでに20年くらいかかった。働き方改革の側面もある。着実に粘り強く実施し、消費喚起と働き方改革に結びつけていければいい。今日は4月1日の関連法の施行に合わせて考える場としてシンポジウムを開くことにした。皆さんがシンポジウムでの事例報告などから何かを得てもらえれば良いと願っている。

ビデオメッセージ

経済産業大臣 世耕 弘成 氏経済産業大臣
世耕 弘成 氏

プレミアムフライデーは官民共同のプロジェクトとして2017年2月から実施し、2周年を迎える。1000社超の企業がこれを利用したセールやキャンペーンを展開し、昨年11月からは地域の企業やコミュニティーと連携し、社会人の新たな学びの場を提供する「プレ金大学」が各地で催されるなど新たな動きも始まっている。

一方、働く皆さんへのアンケートでは、早い時間の退社を実施しておられるのは2割にとどまる。より魅力あるコンテンツの充実に努め、環境をつくらねばならない。多様な働き方を選択できる1億総活躍社会の実現へ、働き方改革との連動も重要だ。今日のシンポジウムの内容を多くの皆さんにご理解いただき、産業界や国民の皆さんに「ちょっとした豊かさ」を感じられる社会が来ることを祈念している。

挨拶

厚生労働大臣政務官 上野 宏史 氏厚生労働大臣政務官
上野 宏史 氏

プレミアムフライデーは官民が連携し、幸せや楽しさを感じられる体験や、そのための時間の創出によって消費を促し、働き方改革へつなげていく大切な取り組みだと考えている。4月から関連法が順次施行される働き方改革は、時間外労働に上限規制を設けるなど労働基準法の70年ぶりの大改革で、あらゆる機会を通じてしっかり周知され、企業に浸透するよう努めている。

その中でもプレミアムフライデーは年次有給休暇の取得促進の有力な取り組みで、厚生労働省としても時間単位年休やフレックスタイムなどを通じた柔軟な働き方とワークライフバランスの実現へ、労使の話し合いの機会が整備されるようにしっかり対応していきたいと考えている。本日お集まりの皆さんの働き方改革への取り組みが一層進むよう祈っている。

基調講演

プレミアムフライデーと日本の働き方の転換
みずほ総合研究所 専務執行役員 調査本部長 チーフエコノミスト 高田 創 氏みずほ総合研究所 専務執行役員
調査本部長 チーフエコノミスト
高田 創 氏
ゴールは週休2.5日

平成は縮小均衡的な「雪の時代」で、アベノミクスの成果も含め雪は解けつつあるが、マインドは雪のままだと感じる。それを変えるのがプレミアムフライデーで、改元もある今年は脱雪の時代へ大きな契機だ。

金曜日の支出は外食や被服などを中心に平日より増加しており、レジャー活動の分布は夜に多い。安全な日本なら、プレミアムフライデーを糸口にした「ナイトライフエコノミー」がインバウンドを含めた好循環を生む可能性もある。

プレミアムフライデーを通じた働き方改革で生産性革命を果たす、それ自体が成長戦略だと考えても良いだろう。人口減をはね返して日本を底上げするには、IT(情報技術)や様々なイノベーションを取り込む一方、働く者がリフレッシュできる新たな試みで生産性を上げる必要がある。若い人たちはプレミアムフライデー賛成派が多く、働き方改革にも敏感だ。就活生の企業選びも休暇が大きなポイントになっている。

みずほ総合研究所の試算で1年目の消費押し上げ効果は700億?1000億円程度という結果が出たが、早時退社の参加率は10%で低空飛行といえる。経営管理層が率先してプレミアムフライデーを行う意識改革が必要で、そういう会社に労働力が集まるという循環が期待されている。早帰りをした人の満足度はやはり大きく、実施企業で社員のモチベーション向上などの効果も出ている。2年間で判断せず、気長に辛抱強く対応する必要がある。

プレミアムフライデーはあくまで一里塚であり「週休2・5日」のゴールに向けて日本のライフスタイルを変えていくことが転機につながる。忙しい月末にこだわらずに振り替える柔軟性からも新しい働き方の機運が出るだろう。プレミアムフライデーが〝シンボル〟となって休日の在り方や休み方の改革の議論につながり、土日に集中しがちなリゾート産業の体質も変わる可能性が高い。

講演

プレミアムフライデーと取り組みの重要性
日本ショッピングセンター協会 理事、公共政策・環境委員会委員長 竹内 彰雄 氏日本ショッピングセンター協会
理事、公共政策・環境委員会委員長
竹内 彰雄 氏
スタッフにも「プレ金」

現在、全国のショッピングセンターは3200余りあり、その売上高は約32兆円ある。約300兆円の日本の消費の1割強を占めるという規模感だ。業界では今、買い物をする場から発展して「そこで過ごす施設・空間」にしたいという議論をしている。「モノからコト」という流れの中で多様化を進めていこうということだ。

日本ショッピングセンター協会の中で、センターを運営するデベロッパー会員325社に実施したアンケートでは、プレミアムフライデーへの具体的な取り組みとして従来のセールとはちょっと変わったセールを実施しているという答えが27%、飲食関係で特別メニューを作るなどが21%、ポイントアップなど提携カード施策を行っているというのが20%だった。そうした取り組みの効果で売り上げが増えた、やや増えたという回答が計35%あったという点を心強く感じている。

協会は会員に効果があった事例などを紹介しているが、地方の地域密着型のショッピングモールでは盛り上がりに欠ける部分もあり、今後はイベント開催などで各地域とタイアップしていこうと考えている。同時に、スタッフもプレミアムフライデー、もしくはそれを振り替えた日を楽しめるようにしていきたい。月末の金曜日という設定に難しさはあるが、3年目の今年は首都圏のみならず地方も含めて新たな対策を講じていきたい。

事例紹介

サントリーの働き方改革
サントリーホールディングス ヒューマンリソース本部 人事部 部長 千 大輔 氏サントリーホールディングス ヒューマンリソース本部
人事部 部長
千 大輔 氏
「やってみなはれ」で挑戦

当社の創業者、鳥井信治郎は「やってみんことにはわかりまへんやろ」「やってみなはれ」という言葉を残している。それが今の社員にもDNAのように息づいているサントリーグループは、2010年からワークスタイル革新に取り組んだ。フレックスタイム制と在宅勤務制度を拡充したが、労働時間はほぼ変わらなかった。

これではいかん、となり「働き方改革は競争戦略」だと位置づけて16年から再び取り組みを始めた。「メリハリ」「濃く働く」「ワークライフバランス」をキーワードに、組織や部署のトップが関与する「トップの推進」と、現場実態に合った取り組みづくり、組合と協働したチェックという3本柱を進め、残業時間は1割強減り、年休取得も1・3倍になった。

だがさらに「仕事の中身を変える」ための改革を17年から始め、IT活用による業務の再設計、現場発想で改革を進める推進リーダーの設定、成功事例を示すことで社内に「やってみなはれ」と挑戦を促すナレッジサイトの構築を行った。

18年の総労働時間は15年比で90時間近く削減できた。ただ取り組みはまだこれからだ。社員には新たに生まれた時間でもっと高い付加価値を創出できる仕事に挑戦してほしいし、労働時間短縮や生産効率の向上だけに終わらず、それをイノベーションにつなげる取り組みにも着手していきたい。

住友商事の人材戦略 ~多様な個々人が力を最大限発揮できる環境整備に向けて~
住友商事 理事 人事厚生部長 降幡 至功 氏住友商事 理事 人事厚生部長
降幡 至功 氏
「月末以外も対象」で効果

当社は2014年から「やる時はやる」「休む時は休む」の考え方でメリハリある働き方に取り組んできた。短期のメリハリとキャリアステージ、ライフステージに合わせた中長期のメリハリの双方を目指したものだ。

まず有給休暇取得の定量目標を定めた。段階的に目標を引き上げ、18年の目標「14日」の達成率は94%程度に上った。プレミアムフライデーも17年1月に導入し、月末以外の金曜日も有給休暇やフレックスタイム利用の対象とした。さらにトップのメッセージを出すため、具体的事例を紹介した働き方サポートハンドブックを作り配布した。毎年の階層別研修の教材にも活用している。

今はフェーズ2として、多様な人材のさらなる活用と社員一人一人が最大限に力を発揮できる環境整備に取り組んでいる。新しい価値創造には働く人の自己価値の向上が不可欠と考え、それを実現するためテレワークとスーパーフレックス制を導入した。百パーセント「人間性善説」で「まずはやってみる」姿勢で臨んだ。結果として業務の見える化が進み、時間当たりの成果を意識するようになったという現場の声や、部下を効果的に管理できるようになったという上司の声も出ている。

当社の働き方の改革・進化は始まったばかりだ。従業員、ステークホルダーの色々な声を真摯に受け止めて進めていきたい。

働き方改革を加速させるワークプレイスマネジメント
NTTファシリティーズ ソリューション本部 ファシリティマネジメント部 システムエンジニアリング部門 スマートビル担当 担当部長 中西 宏行 氏NTTファシリティーズ
ソリューション本部 ファシリティマネジメント部 システムエンジニアリング部門 スマートビル担当 担当部長
中西 宏行 氏
ワークプレイスの整備カギ

少子高齢化と労働力不足で、労働成果は上げたいが労働投入量は下げたい。だが定型業務は機械やロボットに置き換えて労働投入量を抑えられても、企画や戦略立案のような非定型業務は難しい。

成果を上げるポイントは、社員が会社への愛着を感じる「エンゲージメント」と、社員が協力して働く「コミュニケーション」の2要素だ。エンゲージメントが高い企業ほど利益率が高く、コミュニケーション量が多いほどエンゲージメントに影響するという相関関係が指摘される。働き方改革は「コミュニケーションを誘発するワークプレイス」「指標を定義し、効果を測定する」「企画~運用までをマネジメントする」がポイントになる。

ワークプレイスはレセプション・受付、会議・プレゼンテーション、ミーティング、休憩・リフレッシュ、ライブラリー・情報サービス、個人が集中できる「Think」などのシーンを整備した。

さらにコミュニケーション・モニタリングシステムを開発して測定したコミュニケーション時間を総労働時間で割るという指標を定義し、企画運用はPDCAサイクルを徹底した結果コミュニケーション時間は社内で2・7倍、他組織との間で2・4倍に増えた。コミュニケーションスペースを一層広げ、働き方改革を加速するワークプレイスを実現していきたい。

串カツ田中が実践するプレミアムフライデーの施策・効果とは
串カツ田中ホールディングス 代表取締役社長 貫 啓二 氏串カツ田中ホールディングス
代表取締役社長
貫 啓二 氏
従業員の物心の幸福追求

当社は街の一軒の串カツ屋から「串カツ田中の串カツで一人でも多くの笑顔を生むことで社会貢献し、全従業員の物心両面の幸福を追求する」の企業理念でやってきた。採用も色々工夫をしないと来てもらえないので、働き方には意識を払ってきた。休みがあったら心が癒やされるものでもない。成長欲求を満たすような会社を目指し、10年で上場できる企業になれた。

プレミアムフライデーは2016年の終わりころ、契約しているサントリーから対応を聞かれた。他の飲食業が様子見だったので、串カツの「フライ」にかけたダジャレで「フライングフライデー」をやろうと考えた。1番にやることによって全国に広げ、注目してもらおうということでチャレンジした。

施行1カ月前から始めたところ、テレビの取材が殺到して50番組くらいに取り上げられ、既存店売上高は大きく上がった。今も順調に推移している。

働き方改革の面は、当社はサービスする方なので早く閉店するわけにはいかないが、毎年休みを増やし、今年は年間休日117日とした。従業員の受動喫煙を避けるため全店舗禁煙も昨年6月から取り組んでいる。

禁煙は売り上げ低下懸念もあったが、プレミアムフライデーの成功体験があったから決断できた。プレミアムフライデーの定着までサービス提供側として頑張りたい。

官民連携で取り組むプレミアムフライデーをきっかけとしたライフスタイル改革
静岡市プレミアムフライデー 官民推進協議会 会長、静岡商工会議所 会頭 酒井 公夫 氏静岡市プレミアムフライデー
官民推進協議会 会長、静岡商工会議所 会頭
酒井 公夫 氏
企業・市民・店舗一体に

プレミアムフライデーの話が出た時、私は静岡市のためではないかと本気で思った。小ぶりな政令指定都市で中心市街地がまとまり、新しいことが市民にすぐ見える。これをうまく使えば地元経済の活性化に使えると感じていたからだ。

市からは当初の段階で働き方改革につなげたいという提案があり、消費喚起と働き方改革の双方を企業、市民、店舗の三位一体で展開した。私は「長期的にやろう」「成果の判断は20年だね」と言ったのを覚えている。

その後は制度を広く知らせるためシンボル的なイベント開催や「定時退茶飴(あめ)」というグッズを作るなどといった広報発信をした。就業規則を改定する企業が現れ、土日のイベントに金曜を絡める事例も増えた。自分磨きのリカレント教育として、市民公開型のクロストークのセッションを開いた地元の大学もある。

今は市民の認知度がほぼ100%となっており、金曜午後3時以降は全社的会議をしないなど500社超が取り組みを宣言した。月末だけでない「プレミアムフライデー・プラス」の動きも出ている。 

これまでは時間を作ることをやってきたが、今後はそれを基に価値を生み出して仕事と自分らしさを両立する。それを「まち」単位でやり、静岡は働きやすい場所だとアピールしていく方向で活動している。成果が上がるよう頑張りたい。

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